魚類学雑誌
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コバンザメの産卵行動と仔稚魚の行動
中島 東夫川原 大高松 史朗
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1987 年 34 巻 1 号 p. 66-70

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抄録

1974年6月3日から12月3日まで, 大分生態水族館の11尾のコバンザメEcheneis naucratesを展示している水槽で, 水温が25℃以下に低下した時以外は, 連目消灯後, 産卵行動がみられ, 直径2.6mmの浮遊性卵が1日平均して約500個産卵された.
産卵行動は, オスがメスの腹部を吸盤で刺激し, メスは産卵しそうになると水槽中央上方に泳ぎ出し, 4-6尾のオスがそのメスを追い, 吸盤で水面に押し上げ, 同時に産卵と放精が起こるとい'うものであった.
6月15日にふ化した70尾の仔魚の飼育を試み, 9月1日まで26尾の成育が認められ, 並行してその時の仔稚魚の行動を吸盤により吸着がみられる時期まで記録した.仔稚魚の形態変化における特徴は, 吸盤の形成と尾鰭の伸長であり, それらの変化に対応して行動もいちじるしく変化した.
吸盤が出現しはじめるまでの時期は尾鰭を折りたたみ, 斜め上を向いて泳ぎ, 餌をとる時には尾鰭を開き, 体をS字型に曲げ, 尾鰭をあおり, 体をまっすぐにして動物プランクトンに突進し, 餌をとった瞬間には, 尾鰭は元の状態に戻していた.吸盤が出現しはじめると, 尾鰭を折り曲げて水槽底で立ち, 吸盤の形成が完成すると, 体をあお向けにしたり, 腹ばいになったりして, 水槽底に横たわるようになった.もっとも成長の早い個体でふ化後35日, 体長55mmで水槽内に設置したパイプや板に吸着するようになった.

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