魚類学雑誌
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イトヨ類の繁殖特性における分化
森 誠一
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1987 年 34 巻 2 号 p. 165-175

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抄録

石川県河北潟産湖河型イトヨと滋賀県地蔵川産, 岐阜県津屋川及び山除川産ハリヨにおける繁殖的特性, 成熟期の体長, 卵径, 一腹卵数, 孕卵時の体幅, そして一巣卵数の比較をした.また, アメリカ, ヨーロッパ産のイトヨ類個体群とも比較し, 日本産イトヨ類の生態学的な繁殖特性を示した.
体長は湖河型イトヨ, 地蔵川産, 山除川.津屋川産の順に大きく, 卵径においては明らかに地蔵川産が大きく, 渕河型イトヨが最小であった.一腹卵数の平均は体長の大きさにより渕河型イトヨが最多であるが, 体長50mmにおける推定卵数は岐阜県産が有意に多く, 体長に対する体幅比も大きかった.またさらに, 一巣卵数において渕河型イトヨは平均2, 638 (範囲, 1, 119-4, 052), 山除川産ハリヨは1, 815 (464-2, 947), 津屋川産は1, 518 (358-3, 164), 地蔵川産は648 (264-1, 645) であるが, 巣をもつ雄の配偶回数を平均一腹卵i数から推定すると, 山除川・津屋川産ハリヨは十数回にもなり, 外国産イトヨ個体群を比べても最多であるといえる.
これら湖河型イトヨとハリヨ間, 及びハリョ個体群間の繁殖的特性における相異について, 生態学的な意義を究極, 至近 (行動学的意味を含めて) 要因の両面から考察した.

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