魚類学雑誌
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北海道産トミヨ属魚類の同所集団間における遺伝子頻度の比較
丹羽 卓朗
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1987 年 34 巻 2 号 p. 184-190

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抄録

北海道産トミヨ属魚類3種, イバラトミヨ, エゾトミヨおよびトミヨについて, 北海道内の5河川で混生する2種あるいは3種間で, 電気泳動法により推定された遺伝子頻度を比較した.調べた遺伝子座はLdh-E, Pgm, SodおよびMpである.その結果, エゾトミヨは調査した全ての河川において, 混生するイバラトミヨあるいはトミヨとは異った遺伝子頻度を示し, 独立の繁殖集団を形成していると推定された.このうち, エゾトミヨとイバラトミヨが混生するルルマップ川では, エステラーゼおよびPGMの電気泳動パターンによって, 131個体中, 種間雑種が4個体検出された.一方, 琵琶瀬川で混生するイバラトミヨとトミヨの間では, 遺伝子頻度に違いは見い出されなかった.さらに, 両者を同一集団と仮定し計算した場合にも, バーディ・ワインベルグの平衡にあることが認められた.従って, 少なくとも琵琶瀬川においては, イバラトミヨとトミョは同一の繁殖集団に属する可能性が示唆された.

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