魚類学雑誌
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コイ科Catlocarpio siamensisの核型とDNA量
鈴木 淳志多紀 保彦
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1988 年 35 巻 3 号 p. 389-391

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抄録

Catlocarpio stamensisはタイ, ラオス, カンボジア, ベトナム南部に分布する大型のコイ科・バルブス亜科魚類である.本種はインドからビルマにかけて分布するCatla catlaと形態的に酷似しており, 背鰭条数, 咽頭歯数などで明瞭に区別されるものの, 過去には両種を混同した報告が少なくなかった.本研究でCatlocorpio siamensosの染色体とDNA量を調査した結果, 本種の染色体数は2n=98, 腕数 (arm number) は170, DNA量を他のコイ科魚類と比較すると四倍性のコイCyprinus carpio (2n=100) とほとんど等しく, 2倍性のPuntius orphoides (2n=50) の約2.28倍であることが判明した.Catla catlaのDNA量は未調査であるが, 染色体数は2n=50と報告されており, Catlocarpio siamensisの染色体数, DNA量と, 両種の形態的類似性を考え合わせると, この2種は倍撒関係にあるものと判断される.Catlocarpo siamensisCatla catla型の祖先型から染色体の倍数化によって出現し, 地理的に隔離された条件下で分化したものと思われる.両種の染色体数, 腕数は完全な倍数関係にはないが, これは倍撒化後の染色体再構成によるものであろう.

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