魚類学雑誌
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スズキ科ノコバスミクイウオの再記載と西部太平洋からの初記録
望月 賢二Solomon Gultneh
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1989 年 35 巻 4 号 p. 421-427

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抄録

熊野灘および南シナ海で採集された標本をもとにスズキ科PercichthyidaeのノコバスミクイウオSynagrppsspinosusを西部太平洋から初めて記録した.本種はこれまでメキシコ湾からの原記載とスリナム沖からの標本によって知られているだけであった.そこでこれらをふくむ西部大西洋で採集された標本を調べ, 西部太平洋産の標本と比較した.その結果, 両者の間に重要な違いはなく, 同一種であるとの結論を得た.本種の形態的特徴は以下の通りである.腹鰭棘, 唇鰭第2棘, および第1背鰭第2棘の各前縁に明瞭な1小棘列を有する.第2背鰭棘に小棘列がない.磐鰭が2棘7軟条 (稀に8軟条) である.第1背鰭が9棘, 第2背鰭が1棘9軟条である.側線鱗数は29-31である.下顎側部に4-7本の大犬歯状歯列があり, そのすぐ外側に1列の微小歯列がある.脊椎骨は10+15である.本種はこれらの形質の組合せにより本科の他種と容易に区別できる.本種は底魚類の一種で, 主に100-500m水深の大陸棚および同斜面上部から底曳網類により採集されている.また, 本種の西部大西洋と西部太平洋という大きく隔たった分布について, 第三紀における海洋構造の変遷や気候の変化との関係で議論した.

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