水槽内で自然産卵させたコクチフサカサゴ卵を飼育し, 卵内発生過程や卵, 卵嚢および仔魚の形態を記載した.本種の卵はゼラチン質の卵嚢内に一層に埋没している.卵嚢は中空の扁球形で, 通常は水面近くに浮遊する.個々の卵は透明の卵形で, 平均直径0.86×0.75mm, 油球はない.水温22-24℃で受精約34-40時間後に孵化する.孵化仔魚は平均脊索長1.55mmで, 筋節数25前後, 色素胞は有していない.膜鰭は袋状で, 体全体を覆う.膜鰭上には多数の胞状顆粒物がみられる.孵化3日後に卵黄が完全に吸収され, 開口し, 眼や胸鰭縁辺に黒色素胞が沈着する.消化管背面や尾部腹中線上の黒色素胞は孵化4日後に出現する.