土佐湾の砕波帯において, 1985年10月から1986年5月にかけて採集されたアユ仔稚魚からGPIアイソザイムを検出し, 放流された陸封型アユに由来する仔魚の砕波帯における出現状況を追跡した.サンプルのGpi-1100遺伝子頻度は, 陸封型および両側回遊型との中間的な数値を示した10月下旬の標本以外はほぼ両側回遊型を表した.各個体の耳石からそれらの艀化目を推定すると, 10月上旬までに産出された個体が10月下旬および11月上旬のサンプル中に計36尾出現した.これらは, 陸封型の仔魚の混入もしくは両型の交雑によるものであると思われるがその判別はできなかった.しかしながら, これら陸封型アユに由来する仔魚は土佐湾砕波帯においては海産アユ仔魚に比べて量的に極めて少ないものと推測された.