魚類学雑誌
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ニジマスの運動時における脾臓からの赤血球の供給とアドレナリン注入による脾臓の収縮
喜田 潤板沢 靖男
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1989 年 36 巻 1 号 p. 48-52

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抄録

ニジマスの運動時における脾臓の赤血球供給機能についてしらべた.15分間の強制運動の直後には, 安静時の値に比べ, 脾臓重量は約70%減少し, 脾臓中ヘモグロビン含量は約85%減少した.脾臓から放出された赤血球の量は, 2.33ml/kg bodyであった.これは, 安静時における赤血球量の約20%に相当する.これらの事実は, 運動後に脾臓, 脾動脈ならびに脾静脈の破損がみられないこと, および腐食鋳型法による血管系の観察結果より考えて, 脾臓から放出された赤血球は脾静脈を経て静脈血循環系に供給される以外にはあり得ないことと併せて, 脾臓が循環血液中に赤血球を供給したことを示すものである.アドレナリンの脾内注入によって, 脾臓は著しく収縮した.この事実は従来実証例の少なかった魚の脾臓に対するカテコールアミンの収縮効果を示しており, 運動時の酸素需要増大に対し交感神経の支配によって脾臓が貯蔵ヘモグロビンを循環血液中に供給する能力を持つことを示唆するものである.

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