魚類学雑誌
Online ISSN : 1884-7374
Print ISSN : 0021-5090
ISSN-L : 0021-5090
バクホウカスベ (新称) の2番目の記録
石原 元Matthias Stehmann
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 37 巻 2 号 p. 182-186

詳細
抄録

東京大学海洋研究所研究船白鳳丸の1985年航海でスラウェシ南方のフローレス海の水深約600mからバクホウカスベ (新称) Notoraja subiilispinosaが採集された.本種はStehmann (1989) によりマニラ沖の南シナ海の水深970mからholotype1個体に基づいて記載され, 本記録が2番目となる.原記載に欠けていた脊椎骨数, 胸鰭・腹鰭条数, 腰帯を記載した.また, 原記載のdi-agnostic characterであるnasal curtain後縁近くにある鋸歯状の皮褶はholotypeの奇形に過ぎない事が判明した.なお, Stehmann (1989) はいくつかの重要な形質で本種とトビッカエイがソコガンギエイ属Bathyraja魚類とは異なるとしてトビツカエイ属Notorajaをソコガンギエイ属から独立させた.本標本の腹椎骨数 (26) はトビツカエイのそれの変異 (24-27) に含まれるが, ソコガンギエイ属のそれの変異 (29以上) には含まれず, この処置が妥当であった事が確かめられた.トビツカエイは北西太平洋の深海 (505-1, 000m) に分布するのに対して, バクホウカスベはインド・太平洋の中央部の深海 (600-970m) に分布すると考えられる.

著者関連情報
© 日本魚類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top