ウグイ属魚類における嗅覚による種識別の可能性を, 交差順応法 (cross adapatation method) により, 電気生理学的に調べた.被験魚はエゾウグイで, 嗅覚刺激としては, ウグイ, マルタおよびエゾウグイの, 排卵雌の卵洗浄液と成魚雄の尿を用いた.その結果, いずれの嗅覚刺激においても, 種内に比較して種間の差異を大きく識別し, 嗅覚によって種を区別できることが示唆された.今回用いたような嗅覚刺激が, 成魚の産卵行動を誘発することはよく知られている.成熟魚が, 同時にその情報を, 同種の認知に適用していることは, 大いにありうることと思われる.