ニジマスOncorhynchus mykiss (=Salmo gairdneri) 脾臓の血管系の三次元構築を, 腐食鋳型法を主に用いて走査型電子顕微鏡で観察した.ニジマスの脾臓には, 哺乳類において見られる周動脈リンパ様組織鞘やリンパ小節に関連して特殊化した血管系は見られない.主要動脈は, 被膜下域に向けて細動脈を分出する.動脈性毛細血管が細網組織の網目構造に終わるいわゆる開放型循環が明確に示された.鋳型では樹脂の顆粒状の塊として現れる細網組織の網目構造は、赤血球貯蔵の重要な場所であると考えられる.被膜下域にある静脈は, 細網組織の網目構造の上に偏平に存在する.これらの静脈は一点に集まり, そこから脾臓の深部へ向かい, その大部分が直接中心静脈に連なる.細網組織の網目構造から中心静脈へ走るこれらの静脈は, 激しい運動のような緊急の必要時に, 赤血球を細網組織の網目構造からすばやく排出して循環血液中へ供給するのに適していると考えられる.