1991 年 37 巻 4 号 p. 381-390
屋外コンクリート水槽で飼育したマイワシSardinops melanostictus雄の生殖年周期と, 性成熟に伴う血中ステロイドホルモン量の変動を調べた.精巣の組織学的観察に基づき, マイワシ雄の生殖年周期は, 未熟 (7-9月), 精子形成 (10-12月), 排精 (1-4月), 排精終了 (5-6月) の4期に区分された.精巣の発達および退縮は水温の変化によく対応していた.血中テストステロン量は排精時に急激に増大したが (7.7-24.6ng/ml), 硬骨魚の主要アンドロゲンである11-ケトテストステロンは周年認められず, マイワシではテストステロンが精子形成, 特に排精時に重要な役割を果たすことが示唆された.17α, 20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オンの血中量は精子形成および排精過程を通して一定した高い値を示し (0.6-1.0ng/ml), サケ科魚類やキンギョで報告されたような, 排精との関連性は特に認められなかった.