魚類学雑誌
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タンガニーカ湖における付着藻類食性カワスズメ科魚類3種の種内・種間社会組織
幸田 正典
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1991 年 38 巻 2 号 p. 147-163

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抄録

タンガニーカ湖において共存する藻食性カワスズメ科魚類Tropheus moorii (Tm), Petrochromis trewavasae (Pt), P. orthognathus (Po) の種内・種間社会組織について調査した.3種の個体は同種および他種を排除する採食なわばりを維持していた.ただし, TmとPt間では排他的関係はなく, なわばりは重複していた.なわばり所有者は同種他種にかかわらず, より小さな個体を攻撃したが, 大きな隣接個体には誇示行動を見せた.このことは, 共存するこれら3種がなわばりを伴う体長依存の種内・種間順位制により組織されていることを示している.除去実験から, 小型のTmが大きなPoとのなわばり境界を維持する上で, Ptから利益を受けていることが示唆された.これらカワスズメ科魚類の種間関係は, 種特異的なものではなく, 個体の体長の差異にともない動的に変化することが示された.PoとTmの交尾なわばりと採食なわばりとを比較し, なわばり形態の問題についても議論した.

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