魚類学雑誌
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ハマクマノミの成長抑制とサイズ依存的性転換
服部 昭尚
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1991 年 38 巻 2 号 p. 165-177

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抄録

雄性先熟魚であるハマクマノミの社会構造と, 個体の成長および繁殖経験を, 沖縄県瀬底島の裾礁において1988年6月から1990年11月まで観察した.ハマクマノミはほとんどの場合, 1っの宿主イソギンチャクに2-3個体から成るグループを形成していた.67m×334mの調査域に, 36のグループがまばらに分布し, グループ間での個体の移動はほとんどなかった.24グループでハマクマノミは産卵したが (繁殖グループ), 10グループでは産卵しなかった (非繁殖グループ).繁殖グループでの最大個体は雌で, 次に大きい個体は雄であった.雄と雌の体長差はきわめて大きく, すべての雄はどの雌よりも小さかった.非繁殖グループでの最大個体は雌よりも小さく, 雌よりも未発達かあるいは雄的な両性生殖腺を持っていた.また, その次に大きい個体は雄よりも小さく, 雄的な両性生殖腺を持っていた.どのグループでも最大個体は次に大きい個体の成長を強く抑制していた.雌を除去すると雄は成長するが, 雄が性転換して雌として繁殖する最小サイズ (約75mm SL) に達するまでに1年半以上かかった.このサイズ依存的な性転換は, 雌の雄にたいする強い成長抑制の結果であろうと推察された.

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