魚類学雑誌
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水槽内におけるオキゴンベの産卵と卵・仔魚
田中 洋一鈴木 克美
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1991 年 38 巻 3 号 p. 283-288

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抄録

水槽飼育されていたオキゴンベが約3ケ月半にわたって連日産卵した.水槽内で観察された本種の繁殖行動は, 野外においてすでに観察されているサラサゴンベなどの他のゴンベ科魚類のそれとぼぼ同様であった.
受精卵は径0.75-0.78mmの無色透明の球形分離浮性卵で, 径約0.1mmの油球1個を有する.卵膜腔は狭く, 卵膜および卵黄表面に特殊な構造は認められない.水温26.2-28.4℃で受精19時間後に艀化する.艀化直後の仔魚は全長2.23-2.28mmで, 大きな卵黄が吻端より前方へ突出し, 油球1個がその先端に位置する.黒色素胞が頭部から尾部後方にかけての体背面に十数個, 尾部末端に数個存在する.艀化10日後までの飼育ができたが, 仔魚の形状・形質ともに艀化4日後のものとの相違は認められなかった.
本種の仔魚はその色素配列などの点において, 既報のクダゴンベおよびスミッキゴンベ (田中・大山, 1991) およびグレート・バリアー・リーフで採集された全長3.0mmの種不明の本科仔魚 (Leis and Rennis, 1983) とよく似る.しかし, その後の仔魚における形質はFourmanoir (1971, 1973) の体長30mmおよび31mmの2種とは相違した.また, 本種の初期仔魚の形態は既報のハナダイ類やベラ類のそれに似るが, これらの騨化直後の仔魚の全長は1.22-1.63mmの範囲にあって, 小型である点が本種とは相違する.

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