1992 年 39 巻 3 号 p. 229-233
天然3倍体雌性発生ギンブナの雑種起源説を検討するため, 3倍体交雑種 (ゲンゴロウブナ♀ × コイ♂) F1♀ ×ゲンゴロウブナ♂ またはコイ♂ の生殖能力について検討した.雌は脳下垂体ホルモン注射によって人工採卵でき, 得られた卵をゲンゴロウブナまたはドジョウの精子で再交雑した.その結果, ゲンゴロウブナの精子で媒精した場合の受精率は52.4-88.6%, 自由遊泳率は2.6-34.4%に達し, 正常な稚魚が多数得られた.一方, ドジョウ精子で媒精した場合, 孵化率は3-15%に達したものの, ほとんどの個体は奇形のまま死亡し, 正常稚魚は得られなかった.雄は, ホルモン注射を行なっても採精できなかった.精巣の光顕観察の結果, 精小葉に精母細胞と少数の精細胞が観察されたものの, 精子は認められなかった.これらの結果から, ここで作った人為3倍体交雑種は自然雌性発生集団へ進化する中間ステップに相当するものと考えられた.