1994 年 40 巻 4 号 p. 500-503
三重県上野市大山田村畑でナマズ属魚類の頭骨の一部, 擬鎖骨, 前主上顎骨の歯板, 胸鰭の棘などの化石が採集された.それらは採集層準と採集地域が極めて限られており, 体の同一部位においては同じ特徴を示し, 現生する琵琶湖水系特産のビワコオオナマズの特徴と一致することから同一種のものとみなされ, ビワコオオナマズの化石と同定された.産出層準が古琵琶湖の堆積物の最下層部であることから, ビワコオオナマズは, 現存する琵琶湖特産のコイ科魚類の多くと異なり, 琵琶湖の歴史の初期に形態的に分化を遂げており, 現在まで生き残った遺存種であることが示唆された.