魚類学雑誌
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田切川 (三重県) におけるネコギギPseudobagrus ichikawai (ナマズ目ギギ科) の成長, 成熟および個体群構造
渡辺 勝敏
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1994 年 41 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

1988年4月から1989年12月の間, 三重県北部の田切川 (員弁川水系) に生息するネコギギ個体群を標識採捕法を用いて調査した.本種は春から秋, 特に6月から9月にかけて夜間に活動し, 日中や冬期には抽水植物の繁茂する川岸部の横穴や河床の浮石の下に潜んでいた.体長分布の季節変化と合計202個体の標識魚の成長から, 本種は主として夏に成長することがわかった.秋に最初に現われた当才魚は翌年の7月には標準体長約40mmに達した.雌の一部は2才で体長60mmを超え, 成熟に達した.雄は体長が約100mmに達する3才時に成熟すると推測された.最大体長は雌93.5mm, 雄108.0mmであった.未成熟である1才時にすでにサイズにおける性的二型が現われ, 高齢魚でより顕著になった.成魚の性比は大きく雌に偏っていた.両年とも産卵は7月に行われたと推測されたが, 1988年級群にっいては全く加入が認められなかった.本種が一夫多妻的婚姻形態をもっ可能性, および本個体群が洪水などによる撹乱に対して不安定であることが示唆された.

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