魚類学雑誌
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宮崎県下で見つかったフエダイ科魚類2種の体形異常
延東 真上原 一彦岩槻 幸雄
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1994 年 41 巻 1 号 p. 76-79

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抄録

1990年1月から12月にかけて, 宮崎県南郷漁協目井津支所の魚市場においてフエダイ196尾, クロホシフエダイ408尾が水揚げされたのを確認した.その内, フエダイ1尾とクロホシフエダイ2尾に体形異常魚を発見し, それらの症状と原因について考察した.
体形異常魚はいずれも体高がやや高い, 短躯症状を呈していた.脊柱の湾曲は後湾部と前湾部からなり, 湾曲部の椎体は楔状化していたが, 骨組織そのものには組織学的な異常はなかった.体形異常魚の脳の第4脳室周辺には必ず粘液胞子虫のシストが見つかった.一方, 正常体形を示すフエダイ20尾とクロホシフエダイ45尾の脳には粘液胞子虫のシストを検出できなかった.第4脳室付近に形成された粘液胞子虫のシストが, 魚類に脊柱湾曲を引き起こすことはすでに知られており, 今回見つかったフエダイ科魚類2種の体形異常魚も, その原因が第4脳室付近に形成された粘液胞子虫のシストにあると推察された.
このフエダイ科魚類2種における体形異常の発生率は約0.5%で, 他の水域での過去の調査と比較して明らかに高かった.

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