1991年6月から8月に, 高知県柏島でアミメウマヅラハギCantherhines pardalisの潜水観察を行った.本種は藻食性で, 主に紅藻を摂餌していた.雄は, 腹部皮憎を広げると同時に, 第1背鰭棘を立てすぼめする誇示行動を示した.産卵間近の雌は, 岩の表面をマット状に覆っている細かい海藻に吻を出し入れする動作を数カ所で行った.産卵はそれらのうちの1カ所で観察され, 雌雄のペアで2,3秒のうちに行われた.産卵後に, 親による卵保護は見られなかった.卵は球形で直径0.53mmの沈性粘着卵であり, 毒性の報告されているアミジグサ科の褐藻に付着していた.本種はこのような産卵場所を選ぶことにより, 卵の捕食を防いでいる可能性が示唆された.