1994 年 41 巻 2 号 p. 117-122
ニジマスの肝細胞を通じて胆汁中に排出されるカルシウムが, 血液カルシウムの恒常性の維持に機能しているか否かを調べた.ニジマスに塩化カルシウムを投与することにより高カルシウム血症を誘起し, 同時にスタニウス小体抽出物を投与した.抽出物投与群では, 対照群に比べて血中カルシウム濃度は低下したが, 胆汁カルシウム濃度は両群間で差がなかった.またエストラジオール投与により, 10日目をピークとして顕著な高カルシウム血症が認められたが, 胆汁カルシウム濃度はむしろ逆位相の関係で変動し, 両者の相関係数は-0.95であった.これらの結果から, 胆汁カルシウムはスタニウス小体抽出物による低カルシウム調節には関係していないが, エストラジオールによる肝細胞でのビテロゲニン合成に伴って減少することが明らかになった.