1995 年 42 巻 3-4 号 p. 291-302
アフリカの大地溝帯にあるタンガニーカ湖の北東部ブルンジ国のルモンゲ沖には, 水深9-13mに巻貝の1種Neothauma tanganicenseの空き殻が一面敷き詰められた平坦な地域 (シェルベッド) がある.このシェルベッドには, 湖の他の水域に生息する種と形態的には似るが, 体の大きさが極端に小さいカワスズメ科の魚類が生息している.これらの魚類3タイプを分類学的に検討した結果, 湖の岩場や砂泥底に分布するAltolamprologus compressiceps, Lamprologus callipterus, およびNeolamprologus mondabu であると結論された.これらシェルベッドに生息する個体は体が極端に小さいことの他に, 背鰭基底が短いなどの共通の変異がみられたが, このことはシェルベッドで巻貝の空き殻を産卵場所や避難場所として利用する形態的な適応であると考えられる.