魚類学雑誌
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オジロザメ (ツノザメ目ツノザメ科) は多産
仲谷 一宏中野 秀樹
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1995 年 42 巻 3-4 号 p. 325-328

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抄録

南大西洋で漁獲されたツノザメ目ツノザメ科のオジロザメScymnodalatias albicauda の1尾の妊娠個体から発生中の59個体の胎仔を見いだした.胎仔の性別はオス33個体, メス26個体で, オス: メスの性比は1: 0.79, 大きさは全長157mmから192mmであった.本個体はマグロ延縄で漁獲されたが, 捕獲時の記録によると, いくつかの胎仔が総排出腔より海中に落ちたという.したがって, 60個体以上の胎仔をもっていたと推測される.サメ類の1腹の胎仔数は種類や個体の大きさにより様々であるが, ツノザメ類で知られている1腹の胎仔数は36個体までで, 大部分は20個体以下である.本研究ではオジロザメから1腹59個体の胎仔を見いだしたが, これは今までのツノザメ類の記録をはるかに上回る数で, ツノザメ類では最多, サメ類全体からみてもヨシキリザメ (135個体), カグラザメ (108個体) に次ぐ3番目の胎仔数である.
なお, 各胎仔は大きな外卵黄嚢をもち, 腹腔内の3分の2の長さにおよぶ内卵黄嚢が形成されていた.内卵黄嚢は腸の始部 (十二指腸部) に直接開口し, 腸内にも卵黄物質が見られた.生殖方法は卵胎生 (卵黄物質にのみ依存する非胎盤性の胎生) であると考えられる.

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