魚類学雑誌
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日本産軟骨魚類の脳下垂体に就いて
本間 義治
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1957 年 5 巻 3-6 号 p. 107-113

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抄録

日本産軟骨魚類7種の脳下垂体の形態と組織を観察して、次のような結果を得た。
1.軟骨魚類の脳下垂体も、基本的には前葉 ((1) 隆起部、 (2) 主葉) 、 (3) 中葉、 (4) 神経葉の4要素から構成されている。しかしRajaに限り、前葉は3部並びに顕著に発達をしたいわゆる腹葉から成っていた。腹葉は前葉の延長であるが、決して隆起部と相同のものではない。
2.軟骨魚類の脳下垂体の形態や構造は、硬骨魚類よりも、むしろ円口類のそれに似ている。そして、中葉は脳下垂体の最後部に膨大部を形成して、最大の範囲を占めている。これに反して、神経葉は発達が悪くて濾斗部の延長肥厚したものに過ぎず、腺状部の背方に位置して屋根を形成している。しかし、Rajaに於ては、神経葉が中葉に取り囲まれて膨大部となり、いわゆる神経―中葉を作っていた。
3.前葉は若魚では、柱状細胞が索状に配列しているが、大型成魚では、この細胞が濾胞を形成している。そして隆起部は、主として塩基好性細胞、主葉は主として酸好性細胞より成るが、Dasyatisでは、細胞の色素好性がこれとは逆であった。またRajaの腹葉は、索状の組織であって、塩基好性細胞より成る。
中葉は、酸好性細胞が索状に並び、著しい旋回状態を示していたが、Dasyatisでは、専ら塩基好性細胞から構成されていた。

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