魚類学雑誌
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産卵期におけるシラウオ (Saiangichthys microdon BLEEKER) の生態学的研究
岡田 弥一郎森 浩一郎
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1957 年 5 巻 3-6 号 p. 99-106

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抄録

産卵期に於けるシラウオについてその体長組成、体長と体重との関係及び卵巣重量組成につき生態学的に調査したのでその概略を説明する。
1. 体長組成
体長組成の時期的変化は雌雄何れの場合も余り顕著でない。之は漁獲物が漁具によつて選択される傾向が強い事、及び遡上期に於けるシラウオは年令から見て単一群より構成されている事に原因するものと思われる。
2. 体長と体重との関係
体長と体重との関係に於ては雌雄何れの場合を見てもαの値には差が無いがbの値には差が認められる。この原因を考察すると、著者等が扱つた各時期の材料は何れも産卵盛期 (雌雄の個体数が略々同数になる時期) 以外のものである。即ち産卵による体重の減少及び産卵の為の生殖巣の成熟による体重の増加等により、bの値に差が認められるものと推定される。
3. 卵巣重量組成
卵巣重量組成は一般的に見て時期的に顕著な変化は認められない。之は産卵盛期とそれ以外の時期との間の相関関係が材料の欠除により加味されていない事にもよるが、又排卵は一度に全部行われるのではなく数回に亘り行われる為ではないかと思われる。しかし全般的に見て、卵巣重量の時期的変化傾向は体長組成のそれと相似的である。又卵巣重量の平均値の増減の傾向より考察して、当地方に於ける産卵盛期は3月中旬以降4月の始め頃迄と推定される。

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