魚類学雑誌
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魚類の血嚢体Saccus vasculosusについて
佐藤 光雄黒滝 光明
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1958 年 7 巻 2-4 号 p. 39-44

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抄録

1.本報において1軟骨魚と14硬骨魚の血嚢体が調査された。これらのうち5種の淡水魚にはこの器官が欠けており, DAMMERMAN (1910) の見解と大体一致する傾向がみられた。しかしこの問題については, 鹹水と淡水の棲息区域のちがいのほかに魚の系統的要素をも考える必要がある。
2.血襞体は軟骨魚では脳下垂体の背位にある有対の器官であり, 硬骨魚では下垂体の後部にある不対の隆起となつている.硬骨魚においては, この器官と下垂体との位置関係は三つの段階に大別できる。
3. 血嚢体上皮は, トラザメとコイにおいては単純であるが, 残りの硬骨魚では複雑であり, その程度は種類によつて異なつている。上皮の襞折れが余りに複雑多岐になると, この器官の血とうが縮少し, 内腔も狭くなる。
4. 上皮を構成する小冠状細胞が, 感覚細胞なのか, それとも分泌細胞なのかについては今後の研究をまたねばならない。

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