耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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原著
喘息合併副鼻腔炎における内視鏡下鼻副鼻腔手術後の嗅覚自覚予後  
―日常臨床テータの基づく知見―
出島 健司松本 幸江足立 有希板東 秀樹内田 真哉牛嶋 千久
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2011 年 29 巻 4 号 p. 253-259

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抄録

近年,one airway, one diseaseの概念が知られるようになり,気管支喘息と慢性副鼻腔炎の関連が注目されている。喘息合併副鼻腔炎では,嗅覚障害を伴うことが多いが,その治療結果におけるエビデンスは乏しい。
そこで今回,自験例を元に喘息合併副鼻腔炎におけるESS術後嗅覚予後を検討した。対象は,過去7年間に当科でESSを施行した喘息合併副鼻腔炎症例82例である。一過性改善も含めると84%が術後嗅覚を獲得できたが,嗅覚予後としては良好と判断できた症例は82症例中42例で51%にとどまった。アスピリン過敏や好酸球性中耳炎といった副鼻腔以外の気道好酸球性炎症があると,嗅覚予後は不良であった。ESS既往がある難易度の高い手術ではその嗅覚予後が不良になる傾向があり,手術難易度を下げる術前経口ステロイド投与は嗅覚予後改善に寄与した。術前CTにて全副鼻腔スコア高値および後部篩骨洞陰影が高度であれば嗅覚予後は不良な傾向にあった。一方,末梢血中好酸球増多や術前の静脈性嗅覚検査での無反応症例は,嗅覚予後に影響しなかった。
難治性副鼻腔炎とされる喘息合併副鼻腔炎のESS術後嗅覚自覚予後は良好例は約半数にとどまり,今後この術後成績向上に向けて基礎臨床両面からの取り組みが必要である。

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© 2011 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
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