耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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原著
アレルギー性鼻炎の診断におけるヒスタミン遊離試験の有用性に関する検討
倉上 和也太田 伸男鈴木 祐輔高橋 裕一湯田 厚司岡本 美孝欠畑 誠治
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2015 年 33 巻 4 号 p. 215-219

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抄録

ヒスタミン遊離試験(histamine release test; HRT) は,好塩基球とアレルゲンの反応によって遊離したヒスタミン量を測定する検査であり,採取した全血から分離した好塩基球と段階希釈したアレルゲン液を用いて行う。生体ではなく採取した血液に対して負荷試験を行うため,有害事象のリスクが低いという利点がある。生体への負荷試験と比較して若干精度は劣るものの,抗原特異的IgE抗体測定法(radioallergosorbent test; RAST) によるアレルゲン検査と比較すると高い精度で症状に関するアレルゲンの特定が可能といわれている。
今回われわれは,スギ,ダニ,ハウスダストを抗原としてHRTおよびRASTを施行し,それぞれの結果について比較検討を行ったので報告する。
スギRAST class 2以上の33名から採取した66検体に対し,HRTおよびRASTを施行し,両者の相関について検討を行った。スギ,ダニ,ハウスダストいずれの抗原においても,HRTとRASTの間に相関が有るという結果が得られた。RASTが陰性にも関わらずHRTが陽性であったHRT単独陽性例が2例であったのに対し,RASTが陽性であってもHRTが陰性のRAST単独陽性例は9例から29例と多数存在した。これらの結果は,HRTがRASTと比較し,実際の症状に関与するアレルゲンをより正確に反映している可能性を示唆しており,従来HRTが行われている食物アレルギーやアトピー性皮膚炎のみならず,アレルギー性鼻炎においても,症状を引き起こすアレルゲンの特定にHRTが有用であると考えられた。

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© 2015 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
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