耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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原著
インフルエンザ菌Phosphorylcholineの表出と中耳ムチンMUC5AC及びMUC5B産生への影響
平野 隆門脇 嘉宣川野 利明森山 宗仁児玉 悟鈴木 正志
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2018 年 36 巻 1 号 p. 7-13

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抄録

小児において無莢膜型インフルエンザ菌は滲出性中耳炎の主たる原因菌の一つであり,このインフルエンザ菌の外膜蛋白の成分の一つであるリポオリゴ糖はphase variationによりPhosphorylcholine(ChoP)をエピトープに発現することが知られている。このphase variationによるChoPの発現により細菌の気道粘膜上皮への定着や組織浸潤,宿主のリンパ球などの免疫応答の抑制や調整をすることが知られており,滲出性中耳炎の遷延化に関与することが示唆されている。今回,インフルエンザ菌由来外膜におけるChoPの表出と中耳ムチン,特にMUC5AC及びMUC5B産生への影響について検討した。ChoP陽性(+)及びChoP陰性(–)インフルエンザ菌外膜溶液を中耳腔に注入し,1,3,7日目に顕微鏡下に中耳洗浄液を採取し中耳洗浄液中のMUC5AC及びMUC5Bムチン濃度を測定した。ChoPの有無にかかわらず,インフルエンザ菌外膜により中耳粘膜に免疫応答を誘導し,中耳局所に炎症を誘導することが判明した。中耳貯留液中のMUC5AC濃度は中耳炎惹起後7日目に,MUC5B濃度は中耳炎惹起後3日目に,ChoP(+)群においてChoP(–)群と比較して明らかに亢進していた。インフルエンザ菌は,phase variationによりChoPを表出し,中耳炎惹起後早期にではなく,炎症後期において中耳粘膜における粘液産生遷延化に関与している可能性が示唆された。

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© 2018 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
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