耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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特集 『第36回学会シンポジウム: 内耳と免疫―内耳基礎研究の新展開を求めて―』
内耳の免疫と組織マクロファージ
岡野 高之
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2018 年 36 巻 3 号 p. 233-238

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抄録

内耳はリンパ組織を欠き,また血液内耳関門が存在することから,かつて内耳は免疫学的に特異な器官とされてきた。しかし近年の研究では刺激の無い定常状態での内耳にも免疫応答を行い得る細胞が常在していることが判明している。これらの内耳の免疫細胞の大半が組織マクロファージであり,内耳の様々な部位に分布し,内耳の恒常性維持や免疫応答の初期段階を担っていると考えられている。またこれらの免疫細胞の応答は,難聴や平衡障害などの内耳の病態の進行に大きな役割を果たすことが示唆されている。本稿では内耳における免疫細胞について,特に組織マクロファージに着目して,他の臓器・器官との比較を行い,その起源や動態に関する基礎研究のデータを紹介するとともに,ヒトにおける病態や疾患への関わりについて最近の知見を紹介し,内耳の免疫に関する研究の将来への展望を述べる。内耳の組織マクロファージの動態や発現分子については徐々に解明されつつあるが,未だ不明の点が多い。しかし突発性難聴のような急性感音難聴,および加齢性難聴など慢性に進行する病態の双方で,内耳の組織マクロファージは鍵となる役割を果たしていると考えられ,組織マクロファージが難聴や平衡障害における重要な治療標的となると期待される。

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© 2018 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
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