耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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総説
気道上皮細胞における短鎖脂肪酸によるTissue plasminogen activator(t-PA)の産生
意元 義政高林 哲司坂下 雅文徳永 貴広成田 憲彦藤枝 重治
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2018 年 36 巻 3 号 p. 239-243

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抄録

好酸球性副鼻腔炎は治療薬としてステロイドが必要であり,再発しやすく複数回の手術を必要とすることが多い問題点をもつ。そのため好酸球性副鼻腔炎に対する新規治療薬が望まれている。好酸球性副鼻腔炎の組織学的特徴は好酸球を主体とする多数の炎症細胞の浸潤とフィブリンの沈着である。鼻茸におけるフィブリン沈着は,鼻茸組織内で凝固系因子が亢進し,線溶系因子であるtissue plasminogen activator(t-PA)が低下していることによる。フィブリンは炎症細胞を引き寄せるため,慢性炎症を悪化させる因子である。このため鼻茸内でのフィブリン沈着を制御することが好酸球性副鼻腔炎の新規治療方法として候補となりうる可能性がある。血管内皮細胞におけるt-PAを誘導するagonistには短鎖脂肪酸が知られている。短鎖脂肪酸は食物繊維から腸内細菌で合成される物質であり,生体内にとって有益となる様々な機能を有している。本稿では短鎖脂肪酸が気道上皮細胞からt-PA産生を誘導し,好酸球性副鼻腔炎の創薬のターゲットとして可能であるかを概説する。

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© 2018 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
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