産業動物臨床医学雑誌
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原著
黒毛和種牛の肥育後期における第一胃内細菌叢構成と肥育および枝肉成績の関係
石塚 直樹Kim Yohan岩本 英治正木 達規木村 淳一條 俊浩佐藤 繁
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2020 年 11 巻 2 号 p. 66-76

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抄録

  黒毛和種牛の肥育後期における第一胃液の性状,液相・固相の細菌叢構成と枝肉成績との関係を明らかにする目的で,第一胃液のpH,揮発性低級脂肪酸(VFA),アンモニア態窒素(NH₃-N),乳酸(LA),リポポリサッカライド(LPS)および液相と固相の細菌叢構成を解析し,肥育および枝肉成績との関係を検討した.第一胃フィステルを装着した黒毛和種去勢牛9 頭を供試し,第一胃液pH は無線伝送式pH センサを用いて測定した.29 カ月齢時に第一胃内容を採取し,二重滅菌ガーゼを用いて液状部(液相)と食渣部(固相)に区分した.液相の各種性状のほか,液相と固相の細菌叢構成を次世代シークエンス法により解析した.また,屠殺解体(平均30.5 カ月齢)後,胸最長筋内脂肪を採取し,ガスクロマトグラフ法により脂肪酸組成を測定した.

 その結果,第一胃液pH は平均5.67 と低値を示し,LPS 活性値は平均6.62 × 104 EU/mℓと高値を示した.細菌叢構成では,液相と固相のいずれもFirmicutes 門,Bacteroidetes 門およびActinobacteria 門の構成比が高かった.種レベルではLactonifacter longoviformisOlsenella umbonata の構成比が高く,固相では液相に比べて,Succiniclasticum ruminisMogibacterium neglectum の構成比が高値を示した.脂肪酸組成はC18:1,C16:0,C18:0,C16:1 の順に多く,一価不飽和脂肪酸(MUFA)は57.46 %,多価不飽和脂肪酸(PUFA)は2.22 %,飽和脂肪酸(SFA)は40.32 % であった.第一胃液pHとC16:1およびC18:1組成比との間に有意な正の相関が認められ,高MUFA群では低MUFA 群に比べて第一胃液pH が高値で推移する傾向がみられた.

 以上のことから,黒毛和種去勢牛の肥育後期における第一胃細菌叢構成は,液相と固相で差異があり,また,固相の細菌叢構成は液相に比べて筋肉内脂肪中MUFA 組成や皮下脂肪厚との間で有意な相関が多いことが示唆された.

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© 2020 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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