産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
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原著
伝染性角結膜炎が多発した乳用牛育成牧場から検出された Moraxella bovoculi と眼病変重症化との関連
千葉 悠斗伊藤 めぐみ 土屋 博威楠本 晃子茅野 光範髙橋 英二
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2021 年 12 巻 1 号 p. 21-26

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抄録

 牛の伝染性角結膜炎(IBK)はピンクアイと呼ばれる伝染病であり,進行すると角膜潰瘍などの重度の角膜炎を起こし,増体悪化や抗菌剤治療費など大きな経済的損失をもたらす.角結膜炎が多発する1 育成牧場において,角膜および結膜病変を認める12 頭(重症),結膜病変のみの12 頭(軽症),眼病変のない12 頭(無症状)の計36 頭のホルスタイン種育成牛を供試し,結膜からMoraxella 属菌およびMycoplasma 属菌の検出を試み,検出菌種と眼病変との関連および角結膜炎多発の原因を検討した.Moraxella 属菌は,Moraxella bovoculi およびMoraxella bovis が検出され,Mycoplasma 属菌は,Mycoplasma bovoculi が検出された.重症牛ではMoraxella bovoculi 検出,Moraxella bovis 検出およびMoraxella 属菌未検出はそれぞれ,11,1 および0 頭,軽症牛ではそれぞれ4,5 および4 頭(混合感染の1 頭を含む),無症状牛ではそれぞれ1,4 および7 頭であった.IBK の主原因菌とされるMoraxella bovis は無症状または軽症牛から主に検出され,病原性が不明瞭とされるMoraxella bovoculi は角膜および結膜病変を認める重度の角結膜炎牛から主に検出された.Mycoplasma bovoculi は重症および軽症牛それぞれ10 頭と無症状牛9 頭から検出され,眼病変の重症化との間に関連は認められなかった.以上から牛の重度角結膜炎の原因菌としてMoraxella bovoculi についても認識する必要性があると考えられた.

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© 2021 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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