2016 年 7 巻 4 号 p. 169-174
牛小型ピロプラズマ病が発生している北海道東部の2共同牧野において,マダニの活動時期に合わせて殺マダニ剤を利用したマダニ対策プログラムを4年間実施してきた.その結果,入牧中のTheileria orientalis(TO)の陽転率が低下する一方で,ホルスタイン種放牧育成牛の授精率と受胎率が高い水準で維持された.
次に,放牧育成牛のTO感染歴の違いにより陰性群,陽転群および陽性群の3群に分類し,入牧中の繁殖成績を比較した.陰性群に比べ陽性群では,赤血球数が入牧時に有意な低値を示し,授精率と受胎率の低下が認められた.また陽転群では,赤血球数が入牧時に比べ入牧後2カ月目に低下し,初回授精までの期間の延長と授精率の低下が認められた.
当該牧野では,TO感染は放牧育成牛の繁殖成績を低下させる要因の1つと考えられ,殺マダニ剤によるマダニ対策プログラムの実施は放牧育成牛の繁殖成績に好影響を与えることが示唆された.