法と心理
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注意の限界性をいかに捉えるか : 交通場面を中心として(<特集>法と心理学の可能性)
三浦 利章
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2001 年 1 巻 1 号 p. 10-21

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抄録

注意の限界性と交通安全の関係について、視覚的注意の三側面から論じた。1)視覚的注意の二次元特性、すなわち有効視野の検討からは、混雑場面で有効視野の狭窄が事故原因になりえること、付加的注意を要するカーナビゲーションの使用は特に混雑場面で問題となることを指摘した。2)視覚的注意の三次元特性、すなわち奥行き方向での注意の移動特性の検討からは、その異方性を明らかにし、車内ディスプレイなどの近くに注意を向けさせることには注意の損失を伴うことを指摘した。3)視覚的注意の時間的特性の検討からは、カーナビゲーションの使用前後で、視線が前方に向けられていても、注意が劣化することを指摘した。さらに、低度の飲酒、加齢と注意の限界性の関係に触れた。人間の注意の限界性を十分に考慮して諸評価は行うべきであるとともに、実際的な場面での認知・注意特性に関する基礎的研究の蓄積が必須とされることを述べた。

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© 2001 法と心理学会
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