2011 年 11 巻 1 号 p. 109-120
本研究の目的は中国と日本の所有意識の文化的な違い、および力動的な文化現象としての所有の性格について検討することである。北京(111名)と埼玉(100名)の大学生に対して、2種類の2者あるいは3者間での物のやりとり場面に関するシナリオが提示され、シナリオ中の人物に対する印象と人物間の関係が変化した際の当該行為への許容度について回答を求めた。その結果、1)シナリオ中の人物の行動について、日本の学生は否定的な評価、中国の学生は肯定的な評価をする傾向があった、2)親しい者とその他の者との間では、許容度に違いが見られた。これらの結果から、日中間での所有意識の違いとともに、日常の所有意識が主体一対象一他者の複雑な関係性の中で成り立つことが示された。