法と心理
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飯塚事件における目撃者Tの供述の正確さに関する心理学鑑定(<特集>法科学の可能性と危険性)
厳島 行雄
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 14 巻 1 号 p. 17-28

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抄録

飯塚事件におけるT氏の目撃供述の正確さの心理学的鑑定を行った。飯塚事件とは、小学生2女児が自宅から小学校に登校中に行方不明になり、翌日死体で発見された事件である。T氏の供述とは、この二人の所有物が遺棄されていた場所を事件当日のお昼前に、国道332号の山の中のワインディングロードを軽自動車で走行中(25KM)に、左に急に曲がる下りの坂道で目撃したというものである。目撃から12日後には事件担当の刑事を現場に案内し、その場所を迷いながらも特定し、目撃した人物と車の詳細について供述した。問題となるのは、その人物および停車中の供述内容が極めて詳細であり、そのような詳細な出来事の記憶が果たして本人の経験した目撃に由来するのかという点である。この問題を解決するために、目撃されたとされる場所を利用して、30名の実験参加者によるフィールド実験を行った。実験ではT氏の視認状況を再現することを試みた。その結果、T氏のような詳細を報告できる者は一人もいなかった。この目撃供述は、T氏の面接以前に犯人のものとされる車を調べた警察官によって作成されたことが、本鑑定書の作成後にわかった。このことはその捜査官によって車の詳細に関する誘導が行われた可能性を推察させる。

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© 2014 法と心理学会
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