法と心理
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Print ISSN : 1346-8669
犯人性認定における法科学の位置付けについて(<特集>法科学の可能性と危険性)
豊崎 七絵
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2014 年 14 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

確定有罪判決が誤判であったことが判明した場合、確定有罪判決の基礎とされた科学的鑑定(旧鑑定)と誤判との相関関係は、どのように捉えられるべきか。足利事件や飯塚事件においては、旧DNA鑑定自体に、裁判当時を基準としても、問題点があった。ゆえにそれらの事件の確定有罪判決や旧鑑定は、「科学に関する当時の常識の限界」を理由に、正当化されるべきではない。しかし最近の司法研究『科学的証拠とこれを用いた裁判の在り方』は、「発展途上の科学的証拠」と他の証拠とを総合評価する犯人性認定を正当化すると同時に、「窮極の域」にあるというDNA鑑定を唯一の証拠とする犯人性認定をも正当化する。これら犯人性認定の方法には共通点がある。すなわちいずれも、犯人性の効率的な証明・認定に根ざすものであり、防御の負担を重くするものであり、そして類型的に誤判の危険を持つものである。本研究は、科学的鑑定も含む情況証拠による事実認定においては、複数の証拠に基づく総合評価が必要であると同時に、犯罪事実を直接推認させる間接事実は合理的疑いを容れない程に証明されなければならないと主張する。

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© 2014 法と心理学会
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