法と心理
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[パネル討論3] バイアスとえん罪ー科学鑑定の立場から
平岡 義博
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2017 年 17 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

科学捜査研究所の勤務経験から、科学鑑定と捜査本部の捜査に影響するバイアスについて考察し た。科学鑑定におけるバイアスとして、DNA 型鑑定のエレクトロフェログラムの閾値問題(閾値を 下げた場合、ピークとノイズを間違う可能性)、指紋鑑定における合致基準のグレーゾーンと「鑑定 可能」と「鑑定不能」のダブルスタンダード問題に言及した。いずれも捜査情報からのバイアスに影 響されやすく、結果として鑑定を誤る危険性が内在することを指摘した。 凶悪事件の捜査を担う捜査本部は、犯人検挙のため一丸となって組織力・行動力を発揮する体制 であるが、捜査情報や鑑識資料が希少なケースなどでは、犯人性を支持する情報が取捨選択されて 証拠固めされ、否定的情報が十分検討されない(被疑者検挙という目的しか見えない状態:捜査バ イアス)まま送致されることが、無罪判決や冤罪の遠因になっていると考えられる。こうしたバイ アスの危険性を認識し、これを最小限に抑える対策が必要である。

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© 2017 法と心理学会
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