法と心理
Online ISSN : 2424-1148
Print ISSN : 1346-8669
事例報告:共同生活中のけじめ行為から
傷害致死罪に問われた被告人Aの心理学的鑑定
大倉 得史脇中 洋井上 雅人久岡 英樹
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2020 年 18 巻 p. 117-122

詳細
抄録

同居していた 3 名のうち 1 名が死亡した事件で、傷害致死罪に問われた被告人 A の心理鑑定を 行った事例について、鑑定人、弁護人それぞれの立場から報告した。当初 A は、3 人の共同生活に はルールを破った者が「けじめ」として暴行を受けることを申し出るという習慣があり、死亡した被 害者 C は自ら A や B に対して暴行を依頼し、死亡にまで至ったというストーリーを語っていた。 しかし、鑑定人や弁護人が面会を重ねる中で、実は相被告人 B が心理的に A や C を支配するとと もに、両名に対して激しい虐待を加えていたことを告白するようになった。鑑定人は、A が B によ る支配を受け入れやすいパーソナリティを有していたこと、A の供述変遷が B に罪をなすりつけよ うとするものではないことなどを心理学的に解明した。これにより、A の心理状態に不可解さを感 じていた弁護人の疑問も解消され、説得的な弁論を組み立てることができた結果、A が B の支配下 にあった事情を一定考慮した判決が下された。その一方で、被支配者の「強いられた自発性」につい ては、法心理学分野でのさらなる議論が必要であることが示唆された。

著者関連情報
© 2020 法と心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top