法と心理
Online ISSN : 2424-1148
Print ISSN : 1346-8669
量刑判断にもたらす心理的距離の影響
事件の発生時期に着目して
谷口 友梨池上 知子
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 18 巻 p. 99-116

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抄録

Trope & Liberman(2010)が提起した解釈レベル理論(Construal level theory)では、対象に対し て知覚した心理的距離が遠いほど中心的特徴(e.g., 行為者の特性)の観点から、近いほど対象の周辺 的特徴(e.g., 行為の生起状況)の観点から対象が表象され、また、この現象は潜在レベルと顕在レベ ルの処理両方に影響すると主張されている。そこで、本研究では 2 つの実験を実施し、事件に対す る心理的距離が被告人に対する量刑判断にどのように影響するのかを検討した。参加者にある殺人 事件について数十年前または数か月前に発生したと伝えて概要を呈示し、事件に対する潜在および 顕在レベルの推論を測定した。その結果、事件の発生時期が遠い過去であるほど、顕在レベルにお いて事件の発生原因が被告人自身に帰属されやすく、被告人に対する同情の感情が抑制され、量刑 判断が厳しくなることが示された(実験 1)。加えて、事件の発生時期の影響は潜在レベルの推論に も作用しており、事件に対する心理的距離が近いほど、被告人の置かれた状況に関する自発的推論 が生じやすくなることが示された(実験 2)。事件の発生時期によって事件に対する解釈の仕方が変 化し、それによって被告人に対する非難の程度が規定されることについて司法判断の公正性の観点 から議論された。

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© 2020 法と心理学会
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