本稿は、規範意識の維持・回復・強化を図ることを刑罰の目的とする理論である積極的一般予防論について、心理学理論に依拠しつつ検討するものである。第1に、積極的一般予防論が刑罰制度一般の存在根拠たり得るかについては、それを肯定し得る理論も存在したが、認知的発達理論によれば、刑罰による権威的な対応は萎縮効果をもたらし規範意識の発達にとって妨げとなると解し得た。第2に、積極的一般予防論が新たな立法により重罰化を行う根拠になり得るかについては、重罰化の効果を否定的に解し得る研究が存在した他、刑罰一般の積極的一般予防効果を根拠付け得る研究によっても規範意識を涵養するためにどの程度の刑罰が必要かを明らかにすることは困難に思われた。