法と心理
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模擬裁判評議の経験が裁判員制度に対する評価に及ぼす影響 : 集団主義的傾向・社会的勢力認知との関連で
藤田 政博
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ジャーナル オープンアクセス

2004 年 3 巻 1 号 p. 68-80

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抄録

司法制度改革において、新たに「裁判員制度」が導入される。その制度の導入の是非やあり方を巡っては、職業裁判官とともに評議するという点をとらえ、「集団主義的で権威に弱い日本人の国民性に合わない」という反対論がある。本研究は、そのような議論の妥当性を検証するために「模擬裁判員裁判」の評議参加者、法律家29人と市民198人に対して、質問紙調査を行った。調査の結果、「集団主義尺度」や「社会的勢力認知尺度」と、「評議中に裁判官の意見を重視するか」などの質問項目との間に相関は見られなかった。評議の前後の回答を比較したところ、市民は評議後には評議前よりも、評議において発言できると思うようになっていた。重回帰分析の結果、裁判官の意見をどれくらい重視するかに影響するのは他の市民の意見をどれくらい重視するかであり、発言できるかどうかに影響するのは、どれくらい自分の意見が評議に反映されるかという見込みであった。この結果は、直感的には説得的に見える議論を重ねるよりも、現実に機能しうる裁判員制度の設計において有益な示唆をもたらすだろう。

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© 2004 法と心理学会
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