本研究では, 聴覚障害児の作文における格助詞の使用と誤用の特徴を, 深層格の視点から検討することを目的とした. 聾学校中学部生徒50名の作文で使用されている9種類の格助詞をすべて抽出し, 正用と誤用に分類した. さらに格助詞が表す深層格ごとに正用数, 誤用数, 誤用の特徴について分析した. その結果, 同一の格助詞でも表示する深層格によって正用数の差が大きいことが示された. また誤用の特徴について分析した結果, 正用数が多く, 表示できる深層格の種類が多い格助詞において誤りも多く生じること, 同じ深層格を表示する格助詞の間で置換の誤りが生じやすいことが示された. これらの結果から, 聴覚障害児の格助詞の使用や誤用は, それぞれの格助詞が表示する深層格と密接に関連することが示唆された.