音声言語医学
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原著
エレクトロパラトグラフィ (EPG) を用いた口蓋裂術後症例の歯茎音構音動態の分析
—「口蓋化構音」は“palatalized”か“retracted”か—
藤原 百合山本 一郎
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2010 年 51 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

「口蓋化構音」は, 歯茎音が舌尖ではなく舌の中央部と硬口蓋の後端で産生された歪み音と定義されているが, 実際の構音操作は口腔内の観察や聴覚的印象ではわかりにくい. そこで唇顎口蓋裂術後の10症例を対象として, 歯茎音/t//s//ts/産生時の舌と口蓋の接触パターンをエレクトロパラトグラフィを用いて分析した.
結果, 接触部位の後方化が最も多く (16音) , 次いで広範囲な接触 (6音) , 口蓋前方と後方に二重に接触 (4音) , 前方化 (3音) , その他であった. 後方化していた16音について人工口蓋の前, 中, 後部への接触数を見ると, (1)前方部への接触はあるが中・後部により多く接触 (3例) , (2)中・後部のみに接触 (9例) , (3)後部のみに接触 (4音) と, 後方化の程度もさまざまであった.
これらをすべて「口蓋化構音」としてよいかどうか? また英語表記は“palatalized”か“retracted”か? 今後, 国際的な評価基準との整合性を図るため, 異常構音の分類, 名称について再検討する必要がある.

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© 2010 日本音声言語医学会
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