2010 年 51 巻 1 号 p. 32-37
本研究は分節素間の移行が吃音頻度に与える影響について検討したものである. Shimamori and Ito (2007, 2008) , 島守, 伊藤 (2009) は日本語の吃音においては語頭音節の核母音から後続する分節素への移行に困難さがある可能性を指摘している. しかしながら, これらの研究は語頭音節についてのみ検討したものである. 本研究では核母音からの移行が吃音頻度に影響するのは語頭音節の場合のみなのか, 2音節目においても当てはまるのかを検討した. 対象児は学齢期にある吃音児33名であった. 2音節目の核母音からの移行のある刺激語と移行のない刺激語を用いて, 呼称課題と音読課題を行った. その結果, 両課題において, 2音節目の核母音からの移行のある刺激語と移行のない刺激語の吃音頻度には有意差が認められなかった. この結果から, 2音節目の核母音からの移行は吃音頻度に影響を及ぼさない可能性が示唆された.