筆者らの先行研究で,仮名実在語を音読する際に発達性読み書き障害児は,語彙処理の効率性が低いために非語彙処理を行っている,そして,その非語彙処理自体も遅いということが示された.本研究では,これらの非効率的な語彙処理と遅い非語彙処理という2つの問題が発達性読み書き障害成人例にも共通して示される問題なのかどうかを検討することを目的とした.発達性読み書き障害成人7名と健常者48名に,先行研究同様に文字長と語彙性の効果を調べる音読実験を行った.発達性読み書き障害群は,語彙性に関係なく,健常群よりも有意に音読潜時が長く,大きな文字長効果を示した.先行研究を再現する結果であった.本研究の発達性読み書き障害成人例は,仮名文字列の音読における語彙処理と非語彙処理双方に,先行研究の発達性読み書き障害児童と同様の問題を抱えていることが示唆された.