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音声言語医学
Vol. 57 (2016) No. 3 p. 255-260

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http://doi.org/10.5112/jjlp.57.255

総説

再生医療は20世紀後半のブレークスルーであり,治療困難な難治性疾患に福音をもたらす可能性を秘めている.喉頭領域でも再生医療の研究は声帯,筋肉,軟骨,反回神経をターゲットとして進められており,本稿では声帯再生において臨床応用されている再生医療について紹介する.声帯再生のターゲットとなる疾患は声帯の不可逆的硬化性病変で,声帯萎縮,瘢痕,溝症が含まれる.これらの疾患に共通する病態は,本来振動部分である粘膜固有層浅層の萎縮・線維化であり,この組織変化を是正しない限り音声の改善は望めない.変性した組織を再生土台で置換し,その部位に新しい健常な組織が再生することを期待するのが“scaffolding”と呼ばれる方法である.アテロコラーゲンやジェラチンスポンジが適した材料として挙げられ,ヒト声帯瘢痕に対するアテロコラーゲンの土台移植はある程度の成果を挙げたが,再生誘導に乏しいのが欠点で,安定した結果を得るのは難しかった.増殖因子は細胞の増殖のみならず機能修正を促し,組織再生へ誘導する強力な因子である.多くの増殖因子が研究されているが,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)はすでに市販製剤があり,臨床使用が可能である.声帯萎縮や瘢痕に対するbFGFの声帯内注射は,声帯の質量や粘弾性の回復に優れた効果が報告され,今後さらなる発展が期待されている.

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