音声言語医学
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原著
Communication Self-Efficacy Scaleの分析に見る失語症家族のコミュニケーション対応における課題
―失語症重症度との関連から―
森岡 悦子中谷 謙
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2018 年 59 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

失語症者の家族のコミュニケーション自己効力感評価尺度(Communication Self-Efficacy Scale:CSE)は,「失語症者に対してコミュニケーション環境を提供できる家族のケア能力に関する自己認知を測定する尺度」と定義され,失語症者へのコミュニケーション対応における家族の自己認知を評価することができる.今回,60組の失語症者とその家族を対象とし,失語症者の言語機能と家族のCSEとの関連を分析し,失語症重症度別に家族のコミュニケーション対応における課題の傾向を検討した.その結果,中等度群の家族では,「会話環境と会話方法の工夫」に関する自己認知が低く,重~中等度群の家族では,「会話環境と会話方法の工夫」と「コミュニケーション・ツールの活用」が,ともに低いことが示された.重度になるほど,家族のコミュニケーション対応における課題は複雑であり,コミュニケーション障害に起因する心理的な問題を包含している可能性が示唆された.

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© 2018 日本音声言語医学会
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