音声言語医学
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Print ISSN : 0030-2813
症例
Auditory Neuropathy Spectrum Disorder 1症例の言語発達経過について
木場 由紀子山本 美樹
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2018 年 59 巻 2 号 p. 178-187

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抄録

新生児聴覚スクリーニング(NHS)で自動聴性脳幹反応(自動ABR)により難聴が疑われ,聴性脳幹反応(ABR)では重度難聴という結果であったが,耳音響放射(OAE)は,反応良好でAuditory Neuropathy Spectrum Disorder(ANSD)と診断された女児1例の言語発達について報告する.
本症例は,早期に発見され,療育を受けていたにもかかわらず,5歳10ヵ月でわれわれが出会った時点で大幅に言語の遅れを呈していた.純音聴力検査結果は,正常域~軽度で,語音聴力検査の結果も聴力レベルの程度に比して大きくは乖離していないにもかかわらず,聴覚情報の入力に障害があった.就学にあたり指文字等の視覚的コミュニケーション手段を導入し,聴覚特別支援学校での教育を受けることで言語発達は大きく促進された.
本症例は,構音自体に問題はなく,日常会話も可能であるが,音韻操作課題に問題があり,それが言語習得の障壁の一つとなったと推測された.音韻操作課題の問題は,ANSDの時間情報処理の問題に起因する可能性も考えられた.本症例タイプのANSDでは,聴力レベルや語音弁別能にかかわらず,視覚的なコミュニケーション手段が言語習得に重要であると思われた.
今後新生児聴覚スクリーニングのさらなる普及とともにANSDの診断は増えると予測される.多様なANSDの評価法を確立し,早期より正しい指導方法を適用することが重要である.

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© 2018 日本音声言語医学会
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